Pages

Monday, November 8, 2010

こういう時もあります

3週間続く嘔吐が主訴で来た13歳の避妊済み雌のミニチュア・シュワウザー。2週間半前に他の病院で見てもらったけどよくならないので、友人達に薦められてうちの病院に来たということでした。

診察では、少し痩せていること、肝臓が少し肥大していること、中程度の心雑音がある以外、特に異常はなかったので、内分泌系、肝臓ほか、内臓のチェックをするために血液検査を実施。血液検査で異常が認められたのは肝臓・腎臓のあたり。ということで、レントゲン、そして腹部超音波に進む。

腹部超音波の部屋を覗いてみると、放射線科医の先生の視線がいつもより真剣。あれ、とスクリーンを見ると、肝臓がやられてる。そして胃も粘液層などがなくなっていて、周辺リンパ節にも転移してる。癌だ。

うちは放射線科の先生をはじめ、内科医が化学療法もできるし、外科も専門医がいるので、大体の処置は問題なくできるのだが、3つの臓器に転移しているので、治療をしたとしても予後はかなり悪い。飼い主と相談して、残りわずかに残った日々、生活の質を高めるための痛み止め、吐き気止めを使い、時期がきたら安楽死する、という結論にたどり着いた。

割と元気に病院に来た患者さんを、治療不可能な病気のためどーっと暗い思いで見送るとき、あるいは元気で来た患者さんが麻酔・手術等で亡くなって去っていくとき、どうにも例えようのない悲しみに包まれる。獣医業界も、たくさんの医学的進歩があり、社会的評価も上昇してるけど、Compassion Fatigueや、Burnout Syndromeで仕事をやめる人も多い(平均卒後10年といわれる)。これは先進国で働く獣医ならどの国も同じだと思う。特に欧米では臨床での安楽死も多いので、それに関連してか、自殺者の中に占める獣医の率も年々増えているとのこと(他に高率なのは医師、弁護士、そして最近は歯科医)。

大事なのはバランス。書くのは簡単なんだけど、実際は毎日の仕事に追われてバランスを保つのは、想像以上に難しいと思う。私も日本で最初に働いた動物病院では平均週70-80時間働いて、週1回の休みもセミナーにいったりして、結局休みになってなくて、顔から笑顔が消えた。ある日、マクドナルドに仕事帰り寄って、食べもしないのにハンバーガーを5つほどお持ち帰りしたの見て、妹が「お姉ちゃんがおかしい」みたいなことを言ったのを覚えている。大人として日本でマクドナルドに行ったのはこの日が初めてだったと思う。その週、辞表を提出。結局ドイツから戻って半年ほどで、フルタイムの獣医を辞め、その後、週日は朝ジムに行き、午後と夜は英会話学校で英語を教え、週末だけのパート獣医に切り替えて、渡米までいい感じでバランスを保てたけど、フルタイムだったら難しかったと思う。それに、もし経済的に支えなければいけない家族がいる、あるいは学校から戻ってくる子供達の面倒を見る、ということなら、その選択肢もなかった。

今月の雑誌OPRAHのテーマは、自分のTrue Calling(天命)が何か、ということ。仕事をするために生きるのか、生きるために仕事をするのか、分からなくなってる人たちも多いんじゃないかな、自分も含めて。そしてもちろん、実際に口座にお金が入らなくても家事、育児、家族の世話等も大切な役割。自分がもってる能力を最大限に活かせる道を、みんなが模索しなくてもそれぞれ知っていたら、そしてそれを公正に評価してくる社会なら楽なんだけどね。

No comments: